『Fujiことはじめ』代表 赤澤 佳子

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Face to Face Talk[フェイストゥフェイス トーク]

 

vol.135

まちの力をお皿にのせて

『Fujiことはじめ』代表 赤澤 佳子

 高齢化や核家族化、通信手段の変化などが進み、共同体意識の希薄さが指摘されるようになって久しいが、さまざまな形で地域問題が顕在化するなかにも、明るい兆しはある。富士地域での福祉的課題を発見し、市民レベルでの助け合いとネットワークづくりを目的として昨年4月に産声をあげた地域活動が、存在感を高めつつある。市民活動団体『Fujiことはじめ』代表で同団体の福祉部門『SASAERU(ささえる)』を主宰する赤澤佳子(あかざわ けいこ)さんは、師範の腕前を持つ書道や手話のスキルを活かしたボランティア活動として福祉施設を訪問するなかで、泣いている子どもや困っている人をみんなの力で一人でも減らせたらという思いに至ったという。「誰かのために」を本気で考え、ともに行動する仲間の輪は次第に広がり、より良いまちづくりを目指す歩みは、その力強さを増している。

Face to Face Talk vol.135-1

 

赤澤さんの書を拝見しましたが、書を超えた絵画ともいえる作品で、とても自由で伸びやかな印象を受けました。赤澤さんが続けている書道ボランティア では、必ずしも文字を正しく書くことが目的ではないそうですね。

 「美しい文字を書くことも書道の大切な要素ではありますが、それ以前に、楽しくなければ書道じゃないというのが持論です(笑)。私のボランティア活動の出発点となったのが、書を通して日本の伝統文化を伝える取り組みです。子どもの頃から慣れ親しんできた書道を、二人の娘の子育てが一段落したところで再開したんですが、お正月、七夕、お月見など、書によっても味わえる豊かな文化をより多くの人に感じてほしいと思うようになりました。そして富士市内の障害者施設、児童養護施設、高齢者施設、放課後児童クラブ、フリースクールなどを訪問するなかで、自由に創作する喜びや、人と人が触れ合うことで生まれるたくさんの笑顔に出会うことができました。各施設での活動のようすを自分のSNSに投稿したところ、ボランティアスタッフとして参加したいと申し出てくださる方や、活動で使う半紙や筆を寄付してくださる方がいて、当初私が想像していた以上に活動の幅が広がっていきました。皆さんへの感謝の気持ちと同時に、地域貢献やボランティアは特別なことじゃなく、いつでも誰にでもできることなんだという思いを強くしたのも、この経験がきっかけでした。」
 

Face to Face Talk vol.135-2

佳心(けいしん)(雅号)こと赤澤さんの作品。
墨に加えて各色の顔料を使い分けることで鮮やかで味わい深い書となる。

 

そういった経緯から、より広い視野に立った市民活動へと進展していったわけですね。

 「富士市役所の臨時職員として10年間、市民向けの公共施設見学などの広報・広聴業務に携わってきたこともあって、福祉施設の現状や課題を身近に感じていました。また同時に、一般的にはあまり知られていない裏方の部分で、情熱を持った職員や市民団体が精力的に活動していることを目の当たりにして、専門知識や豊富な人脈を持つ魅力的な人々と知り合うことができました。市役所の仕事では生活や制度に関する相談を受けることも多いのですが、何かあったときにはすぐに、『この人に聞けば分かる!』『あの人に頼めば力になってくれるかも!』と、投げかけられた困りごとや要望に対して、関係者同士をつなげることもできるようになってきました。あるとき、思い浮かぶ友人たちの名前と得意分野を書き出してみたところ、たくさんの線で結ばれたきれいな関係図ができたんです。『この仲間が集まれば、さらにいろんなことができるかもしれない』と感じて、書道や手話のボランティアだけではないさらに大きな歯車が、私の中で動き始めました。」

 

とはいえ、新しい市民活動を立ち上げるには相当なエネルギーが必要だったのでは?

 「それが、まるで巡り合わせたかのようなタイミングで、まちづくりを主体的に実践していく人材を養成するための講座がスタートしたんです。富士市まちづくり課主催の『FUJI未来塾』という市民向け講座で、私はその第1期生として参加しました。講座修了後、同期生のメンバーたちとともに立ち上げたのが、市民活動団体『Fujiことはじめ』です。何かを始めたい人や団体をサポートするための活動を行うグループで、なるべくお金をかけず、行政任せにせず、熱意と行動力を持った個人や団体が草の根的に連携する形で、まちを活性化させることをテーマにしています。じつは富士市内にはすでに500以上の市民活動団体があるんですが、それぞれをつなぐネットワークをつくることで、活動の成果にも相乗効果が期待できます。またその視点を福祉に特化した部門として去年立ち上げたのが『SASAERU(ささえる)』で、年齢も性別も肩書も関係なく、趣旨に賛同する仲間同士が交流することで、地域の福祉課題をみんなで考え、支え合えるまちづくりを目標としています。福祉と聞くと、どこか難しいもの、専門家だけが携わるものといったイメージを持つ人もいるかもしれませんが、そんなことはありません。単身の高齢者がごみを出せずに困っていること、子どもたちが参加できる地域のお祭りへの協力、野良猫や地域猫の問題など、町内レベル、ご近所レベルで考え、行動できることはたくさんあるんです。その入口となる『SASAERU』では、専用のウェブサイトとしてフェイスブックページを開設してメンバー同士の交流や情報交換ができるようにしているほか、年2回のまち交流フォーラム、福祉まつり、芋煮会など、年間約10回のイベントを企画・開催して、地域交流の場を設けています。また私が書道ボランティアで各施設を訪問する際も、『SASAERU』のネットワークを通じて呼びかけたメンバーの皆さんに協力していただいています。」

 

Face to Face Talk vol.135-3

富士見台児童クラブで行われた書き初めボランティアのようす。

 

活動は順風満帆という感じですね。

 「発足して1年弱で、すでに300人以上の方に参画していただき、主要メンバーも当初の5人から9人に増えましたが、まだまだこれからといった感じで、一人でも多くの賛同者を募っているところです。人や地域が抱えている問題は多種多様で、そこに向き合うためには、異なる立場から出てくる意見・知恵・経験が欠かせません。だからこそ、いろんな人が交流するための場が必要なんです。これまでにいろいろな福祉関係のイベントに参加してみて私が感じたのは、その場にいる人の多くがいわゆる『アンテナの高い人』で、仕事や生活環境のなかですでに直接福祉に携わっている人、関心のある人だけの集まりになっているということです。イベントを企画・運営されている方々の熱い気持ちに共感する一方で、これだけでは福祉に対する理解の裾野はなかなか広がらないんじゃないかという思いも抱きました。そういった意味でも、『SASAERU』が目指すのはもっと目線を下げた市民レベルの活動で、福祉について何も知らない人、今すぐ自分にできることなんて思いつかないよという人にこそ、まずはこの活動を知ってもらって、できることから少しずつ関わってもらえたらと願っています。実際、この活動に賛同していただいているのは福祉施設職員や行政関係者だけにとどまりません。民生委員、看護師、教員、会社員、リタイア世代、主婦、大学生など、職業も年齢もさまざまです。より良いまちにしていくという取り組みは、ふつうの人がふつうに感じる思いやりと、それを誰かに届けようとする小さな一歩から始まるんだと思います。」

 

Face to Face Talk vol.135-4

優しいまちが 好きだから

 

赤澤さんの活力の源泉は、一体どこにあるのでしょう?またこれからも続く活動の先に、どんな景色を見たいと考えていますか?

 「私は『家族』に対する思いが人一倍強いのかもしれません。家系図で表せる家族だけではなく、福祉施設を訪問することで触れ合える人々や、ともに誰かに奉仕したり地域に貢献したりする仲間もまた、私にとっての家族なんです。この活動をライフワークにしているのは、血はつながっていないけれど、家族に会いたいから、彼らの笑顔を見たいから。そういう優しい気持ちが集まっている場所に身を置くことが好きなんでしょうね。そういえば小学生の頃、痩せ細った途上国の子どもに対して地に膝をついて水を飲ませているマザーテレサの写真を見て、衝撃を受けたことがありました。こんな人になりたい、こういう振る舞いが自然にできる社会であってほしいと、子どもながらに感じたのかもしれません。そしてそれ以降、なぜか捨て犬や捨て猫も人と同じように思えて、見かけるたびに連れて帰ってきては両親を困らせたんですけどね(笑)。そんな性格の私を見守ってくれた両親、そして今の活動に理解を示して応援してくれる夫や娘に対しても、感謝の気持ちは尽きません。“支える”活動をしている私自身が、多くの人に支えられているんですね。今後の活動の具体的な目標としては、各校区単位で開催されるまちづくり講座など、地域に根ざした形でみんなが集まれる場所をつくりたいと思っています。講演や活動報告を聴くだけの受け身なものではなく、誰もが出入りしやすく、活発な交流ができる場所です。私がいつもイメージするのは、みんながものすごく大きな一枚のお皿の上にいて、助け合いながらいきいきと生活している姿です。みんなが同じ目線に立つそのお皿の上で誰かの『困った』の声が聞こえたら、駆け寄って、できる人ができることをする。そんなシンプルで優しい地域社会が、私の見たい景色なんです。」

Title&Creative Direction/Daisuke Hoshino
Text&Photography/Kohei Handa


Face to Face Talk vol.135-5

 

赤澤 佳子

市民活動団体『Fuji ことはじめ』 代表

1969(昭和44)年 岡山県岡山市生まれ
富士市大淵在住

 

 

 

あかざわ・けいこ/岡山県内の短大を卒業後、スポーツクラブのインストラクターを経て、結婚を機に富士市へ移住。富士ロゼシアターのオープニングスタッフとして勤務した後、出産・子育ての期間を経て37歳で富士市役所へ入職し、公共施設見学案内業務に携わる。幼少期より親しんできた書道を学び直し、師範資格を取得。雅号である佳心(けいしん)として2014年より福祉施設などでの書道ボランティアを開始し、書を通して日本の伝統行事を楽しむ活動を行う。手話サークルにも所属し、手話通訳者の資格取得を目指して勉強中。2015年、富士市まちづくり課主催の人材育成事業『FUJI未来塾』を第1期生として受講し、その翌年に市民活動団体『Fujiことはじめ』を設立。2017年4月には同団体内に福祉に特化した部門『SASAERU』を立ち上げ、現在に至る。

『Fujiことはじめ』 Facebookページ https://www.facebook.com/fujidehajimeru/


Face to Face Talk vol.135-6

『SASAERU』発足の記念イベントとして開催された『第一回SASAERUまち交流フォーラム』のようす。参加者同士のグループセッションでは地域のつながりや福祉的課題について語り合い、お互いに交流を深めた。

『SASAERU』発足の記念イベントとして開催された『第一回SASAERUまち交流フォーラム』のようす。参加者同士のグループセッションでは地域のつながりや福祉的課題について語り合い、お互いに交流を深めた。

 


 

協力:富士市若者相談窓口 ココ☆カラ

SASAERU春のつながるミーティング 

市民活動グループ『SASAERU』が春の交流会を開催します。参加資格や制限は一切なし、途中参加・退出もOKです。まちづくりや地域の助け合いに関心のある方、話を聞いてみたい方、お茶を飲みながらの気軽な地域交流にぜひご参加ください。

申し込み不要・当日直接会場へ
日時:2018年4月14日(土) 13:00〜15:00 
会場:富士市教育プラザ1F (富士市八代町1-1)
料金:参加費:300円
   (小学生以下無料/託児はありませんが、小さなお子様が遊べるスペースを設けます)
問い合わせ先:富士市民活動センター コミュニティf (TEL:0545-57-1221 FAX:0545-57-1091)

 

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