骨盤底筋に優しい毎日を

産婆の住む街から

 

第4回

骨盤底筋に優しい毎日を

前回のコラムでお伝えした骨盤底筋訓練は続けていますか?加齢や出産によって低下する骨盤底筋の機能を保つためには、正しい訓練を継続していくことがとても大事です。そして、それと同じくらい大切なのは、日ごろから骨盤底に過剰に負荷をかけない生活を送るということです。

下腹部のぜい肉を減らそうと骨盤底筋を意識せずにがむしゃらに腹筋をしたり、きついウエストニッパーでギューギューお腹を絞めつけたりしている人はいませんか?身体を整える意識を持つことは大変素晴らしいのですが、骨盤底筋の保護の立場から考えると大変危険な行為です。

骨盤底筋は、横隔膜・腹横筋・多裂筋とともにお腹の骨に守られていない部分を箱状に囲んでいるインナーユニット(図1参照)と呼ばれるものの一部です。密閉された四角い箱の一面を構成しているお腹を圧迫すると、箱の中の圧が上昇して、別の面である骨盤底筋を押し下げて負担をかけてしまうので注意が必要です。

この原理は、よくマヨネーズに例えて説明されます。蓋が緩んでいるマヨネーズを握ると、緩んだ部分から中身が出てきてしまいますよね。腹筋を鍛えるなら、まずは骨盤底筋群という蓋をきっちり閉めながら行うことが必要なのです。喘息や花粉症の方も多いと思いますが、咳やくしゃみもお腹に力が加わる行為なので、鼻がむずむずしてきたら、まずは素早く骨盤底筋を収縮させてからするようにしましょう。

さて今回はもう一つ、骨盤底筋にダメージを与えない排便姿勢についてもお話したいと思います。 突然ですが、皆さんはいつもどんな姿勢で排便をしていますか?ボートを漕ぐように後ろに反り返った姿勢?背筋を伸ばしてまっすぐ座る?それとも前かがみ?

実は、昔ながらの和式トイレでの排便姿勢が骨盤底筋には優しいのだそうです。ふだん私たちは、便が溜まっても簡単に外に漏れ出してしまわないように、骨盤底筋の働きで腸をくの字に折り曲げて便を塞き止めています。和式トイレの姿勢になると、腸の角度が緩やかになって、便を肛門に向かってスムーズに押し出すことができるのです。

洋式トイレの場合には、足元に台を置いて膝が足の付け根より高い位置になるようにして座って、少し前かがみになることで、和式スタイルに近い効果が期待できます(図2参照)。

足元の台に足の裏全体を接地させるようにすると、身体が安定するのでさらに理想的です。便が硬くて押し出すのが大変な方は、食事や適度な運動にも気をつけてくださいね。数年前にバルセロナで行なわれた学会のワークショップで、フラメンコを踊りながらの骨盤底筋訓練を体験しました。踊っている途中でくしゃみをする場面もあり、実際の動きに合わせて正しくタイミングよく働かせることがとても大事だと学びました。

このように実際に骨盤底筋を働かせたい状況のシミュレーションをするのは効果的です。例えば、重い荷物を持ち上げる時には、足を前後に開き、膝を曲げて体勢を低くして荷物に手をかけ、骨盤底筋を働かせてから持ち上げて膝を伸ばします。くしゃみをする時はどうでしょう。鼻がムズムズしてきたら足を交差させて、内股やおしりにギュッと力を入れて、骨盤底筋をすばやくすぼめてから「くしゃみ」!トレーニングは骨盤底筋以外の筋肉に力が入らないように行ないますが、実際の場面では漏らさないことが優先なので、内股やお尻の筋肉も全部使います。

そして何よりすぼめるタイミングが重要です。くしゃみが出た後でどんなに強くすぼめても、あとのまつり。しなやかに良いタイミングで働く骨盤底筋を目指して、今日からトレーニングを始めましょう。

 

堀田 久美(ほった くみ)
助産師/保健学博士
菜桜(なお)助産所代表