「水やり3年」といいますが そんなに待てないという方へ

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樹木医が行く!

 

第24回

「水やり3年」といいますが
そんなに待てないという方へ

 今年は猛烈に寒かった冬がようやく終わったと思ったら、春が妙に短く、すぐに初夏、夏が来たという印象です。この原稿は、5月中旬の富士ばらまつりの頃に書いています。しかし、皆さんが読むのはそろそろ梅雨入りした頃かなと思います。

 さて、今回は樹木医らしい内容の話をしようと思います。植物を育てていると、一番困るのは毎日の水やりです。特に地植えよりも鉢植えを育てている方が苦労すると思います。今年のように猛烈に雨が降ったかと思えば、いきなり夏日、真夏日となると、本当に水やりのタイミングに困ってしまいますね。

 「水やり3年」という言葉を聞いたことがあると思います。これは3年くらい試行錯誤して、苦労してやっと水やりが一人前にできるようになるという意味ですが、水やりのタイミングを見極めることはなかなか難しいのです。基本は「土が乾いてから、たっぷりと水をやる」です。「なんだ!乾いたらあげればいいのか!簡単簡単!」と思うなかれ。日当たり・風通し・季節・気温・湿度・鉢土の配合・植物の健康状態など、さまざまな要素によって、水やりのタイミングは変わってきます。鉢植えがたくさんあれば、当然それぞれのタイミングも違います。とくに多くの人が気づきにくいのは、植物の健康状態です。植物は元気なときはどんどん水を吸収し、土が乾きやすいのですが、弱っていると水の吸収が鈍くなり、それほど乾きません。だから「去年は毎日1回水やりをしていたので、今年も毎日1回!」ということが通用しません。そのため「水やり3年」といわれるのです。

 植物はもともと海の中で長い間生きていた名残りからか、細胞ひとつひとつは水で満たされていて、とくに葉などはその成分の約80~90%を水が占めています。樹木の幹などは若干低く、それでも50%くらいは水です。この水が少しでも減ってしまえば、植物は生命活動を維持することが困難となり、しおれて、枯れてしまいます。たしかに非常に厄介です。

 また植物の吸水量は、夏は25℃で最大値を記録し、それ以上暑いと逆に吸水量が若干低下するといわれています。一方、冬になると根からの水の吸収は夏の20~30%程度にまで低下するそうです。ここから推測すると、春・秋に「1日1回水やりをする」を基準として、夏は約2倍の水が必要で、冬は半分程度の水が必要となります。つまり、水やり回数は、夏には「1日2回程度」、冬はあまり頻繁にする必要がなく、「2~3日に1回程度」で十分となります。皆さんが普段行っている水やり回数と同じくらいではないでしょうか?

 これから迎える夏、もうひとつ頭を悩ませるのは、どの時間帯に水やりをすればいいのかということです。一般に「朝・夕2回」といわれています。さて、これは本当でしょうか? 

 大学などの研究機関のデータをいろいろと調べると、結論としては「夏の水やりはいつでも問題ない」ということでした。意外ですね。これまでいわれていたことと全く違います。その他の要素も総合的に勘案すると、以下のようになります。

  • 夏対策として、水はけのよい土を使って鉢植えし、水やりする時刻は、朝・日中・夕方のいつでもOK。
  • 量は鉢穴から水が流れ出るくらいたっぷりとあげる。
  • 暑くなった鉢土を冷ましたいなら日中の水やりが効果的。
  • ただし、日中の水やりではなるべく葉への散水を避けること。

 いかがでしょうか?この夏はぜひこの情報を活用して、上手に暑さを乗り切ってください。「水やり3年」を2年や1年に短縮できる手助けになれば、これ幸いです。
 

第24回 樹木医が行く!1

樹木医 喜多 智靖(きたともやす)
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
石川県金沢市出身・富士市在住

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