植樹という被災地支援に物申す

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樹木医が行く!

 

第23回

植樹という被災地支援に物申す

 今年も3.11を迎えます。東日本大震災の発生以降、私は樹木に関する復興を支援してきたなかで、いろいろなことに出くわしました。被災地で塩害対策を行うために被災した学校に出入りしていた頃、学校の教頭先生や校長先生から相談されたり、お話しをいただいたりしたこと、自分で実際に目撃した状況を踏まえて、今回はちょっと辛口ですが、そのことを書きたいと思います。

 震災発生後1年経った頃から、私は宮城県石巻市を定期的に訪れていました。それは、津波による塩害被害への対策を行うためでした。塩害とは、津波由来の海水に含まれた塩分が大量に土にしみ込み、それが原因で木が枯れていく現象です。特に塩害に弱いソメイヨシノなどの木に関する依頼を多く受けました。小学校から高校まで6校から依頼を受けて、何度も出入りしていましたが、ある学校の教頭先生から出た言葉が印象的でした。「支援によって植樹された木々で学校がジャングルになってしまう!」と。現状を見ている私からしても、この言葉は決して誇張したものではありませんでした。おそらくこのペースで植樹をすると、10年後には学校は人が近づくことができないような深い森になってしまうだろうなと思っていました。

 被災地支援により学校に植えられていた木々は、多くの人々の善意に基づいていました。しかし、現場である学校では迷惑な存在になりつつありました。なぜか?

  1. 植栽する樹種・本数は、苗木を提供する支援団体が決め、学校の希望は通らない
  2. 植樹はするが、植えっぱなしでアフターケアを行わない
  3. 塩害の影響がある場所に、塩害に弱い樹種を平気で植栽する
  4. 植樹の際の技術不足により、すぐに木が枯れる

 3と4については知識不足・技術不足で、植樹を行うこと自体に問題があります。しかし、厄介なのは1と2でした。基本的に人の善意から来ている行為だけに、支援する側と支援される側のギャップについて改めて考えさせられる大きな出来事でした。

 東日本大震災の後も、熊本地震や水害など多くの自然災害が日本列島を襲いました。自然災害の多いこの国にいる限り、どうしても支援する側とされる側の両方の立場に立った視点が必要になると思います。

 私が専門とする植樹支援に限って言えば、まずは植樹を受け入れる側の希望を聞く必要があると思います。どんな樹種を希望するのか?何本ほしいのか?被災地で見ていると、支援する側からは桜を植えたいという希望が圧倒的に多かったです。しかし、果たして受け入れる被災地側が本当にそれを求めているのでしょうか?

 もしあなたが被災地に木を植樹する支援を行うなら、次のことを検討してみてください。

  1. 植樹受け入れ側に、どんな樹種を植えてほしいか、何本植えてほしいかを問いかける
  2. 植樹後のアフターケアまで必ず行い、その予算を確保する
  3. 適地適木という基本を守り、その場所に適した樹種を選ぶ
  4. 樹種の選定は樹木医のような専門家に相談して決定する

 この4つのことを実行すれば、必ず被災地で喜ばれる植樹支援になると思います。

第23回 樹木医が行く!1 第23回 樹木医が行く!2
植樹支援で植えられたまま管理が行き届かず、すでに半分まで枯れた状態のサクラ 塩害の影響がある場所に植えられたために枯れてしまったサクラをボランティアの皆さんの協力で撤去する作業

樹木医 喜多 智靖(きたともやす)
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
石川県金沢市出身・富士市在住

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