河津桜並木の調査に行ってきました

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樹木医が行く!

 

第19回

河津桜並木の調査に行ってきました

 3月後半、南伊豆の河津町に行ってきました。残念ながら観光ではなく、仕事でした。有名な『河津桜まつり』が終わった時期に、河津桜並木の調査を行ってきたのです。

 この桜並木には、将来への懸念材料が2つあります。ひとつは、河津桜の植栽から50年くらいが経ち、徐々に寿命と言われている年月に迫りつつあり、近い将来に枯死するものも出てくることが想定されるため、河津桜並木の景観を守りながら、いかに更新、維持管理をしていくか。もうひとつは、河川法に基づいた植栽基準への対策です。法律上、河川堤防の川側に樹木を植えることは禁止されており、住宅側に植栽しなければならないというものです。これは樹木が植栽されていることにより、堤防がその治水能力を弱められてしまう可能性があるためです。そこで、現在は川側に植えられている河津桜を今後の更新を機に住宅側に植栽して移していくことが課題となります。

 地域住民や町などが今後実施する議論の基礎資料として提供するため、今回は主に根系調査を行いました。簡単に言うと、「河津桜の根が河川堤防に何か悪さをしているのか?」、「河川堤防があることにより、河津桜の根が何か悪い影響を受けているのではないか?」という視点から調査しました。

 調査対象として指定された6本の河津桜を2日間かけて、頭からつま先まで土まみれになりながら、存分に根っこを調べ、木の状態を確認してきました。

 その結果、「樹木の根は固い土壌には伸長して行けない」という当たり前のことを改めて再認識させられました。

 土壌が柔らかいと、根は木の根元からまっすぐにどんどん伸長します。しかし、ガチガチに転圧された土とその上のアスファルト舗装、またはコンクリート製の堤防天板などに根が出くわすと、いきなり90度の方向転換をして曲がっていったり、土の深い方に潜っていったりして、固い場所を避けて伸長します(写真右)。

 町中で根元の周囲をガチガチに固められた木々をよく見かけます。この状態がいかに木にダメージを与えているかがよく分かると思います。根元を固められた中、木は必死に柔らかい部分を探し、根を伸ばしていきます。根を伸ばすエリアがなくなると、万策尽きて枯れていってしまうのです。

 今回の調査を終えて、全体的にはコンクリート堤防と河津桜がうまく共生している印象を受けました。制約を受けている箇所はあるものの、コンクリートで固められた堤防が河津桜の生育自体を阻害しているというほどの状況ではなく、また河津桜の根がコンクリート堤防にダメージを与えて、強度を弱めているという状況もなく、うまく共生しているのかな?と感じました。河津桜からの視点で見ると、「堤防をなくせば、もっと伸び伸びと生長できるのに・・・」、逆に堤防からの視点で見ると、「河津桜がなければ、洪水を防いでいる雄姿をしっかりと人々にアピールできるのに・・・」と、言いたいことはあるかもしれません。

 河川堤防がしっかりと水害を防ぎ、その上に植えられた河津桜が与えられた環境で美しい景観を織りなし、全体として河津川堤防の風景を作り出しているのかなと思います。

 今後は、地域住民、町、県、有識者の皆さんが河津桜並木をどのようにして守っていくかを議論することになっていきます。私が今回調査した結果が、その基礎資料として役立ってくれることを願うだけです。

第19回 樹木医が行く!1 第19回 樹木医が行く!2
早春を告げる風物詩として毎年多くの観光客を集める河津桜並木。 今回の調査では、河津桜の根が地中でアスファルト舗装にぶつかり、方向転換を余儀なくされている状況が明らかになった。(矢印の方向)

樹木医 喜多 智靖(きたともやす)
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
石川県金沢市出身・富士市在住

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