除草剤で木が枯れる!?

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樹木医が行く!

 

第21回

除草剤で木が枯れる!?

 やや刺激的な今回の表題ですが、答えから言いますと、除草剤で木は枯れます。何年か前に神社のご神木を人為的に枯らすという事件が多発しました。これは、わざとご神木を枯らし、枯れた頃にその神社に行き、伐採の仕事を請け負い、さらにその伐採したご神木を木材として売るということをしていた人たちがいたためです。この時にご神木を枯らすために使われたのが、除草剤だといわれています。

 まずは除草剤についてちょっと書きたいと思います。除草剤とは何か?公益財団法人日本植物調節剤研究協会によると、「除草剤は農薬の一種です。害虫を防除する殺虫剤、作物の病原菌を防除し作物を病害から守る殺菌剤などと同じように、作物の生育を妨害し収穫量や品質を低下させる雑草や、人間の生活の妨害となる雑草を防除する薬剤が除草剤です。植物を殺すことを目的にした薬剤ですから、多くの除草剤は動物や病原菌に対する作用はあまりありません。」とのことです。

 ホームセンターなどで売られている除草剤のラベルを見ると、「非農耕地用」「農耕地用」という言葉が書いてあります。これは農薬登録をされているかいないかの違いです。つまり、「非農耕地用」を田畑に撒くことは違反になり、かつ作物が枯れても保証しませんよ!ということです。

 また、「非選択性」「選択性」という言葉もあります。非選択性ということは、これは全ての植物を枯らす力があります、ということです。逆に選択性というのは、特定の植物を枯らします、ということになります。

 さらに、除草剤の形状も2種類あります。液状のものと粒状のもの。大まかにいうと、液状のものは茎葉処理型といわれる除草剤、粒状のものは土壌処理型といわれる除草剤になります。茎葉処理型というのは、葉や茎に液剤を散布し、その葉・茎から直接的に植物に吸収され、その植物を枯らすものです。CMなどでよく耳にする『ラウンドアップ』はこのタイプです。このタイプは即効型で、一滴でもかかれば、その植物を枯らしてしまいます。しかし効果はその一瞬だけで、その後生えてくる雑草には一切効き目がありません。もちろん、木でもかかってしまうと枯れてしまいます。土壌処理型というのは、粒剤を散布後、土壌表層およそ3~5センチのところに3~6ヵ月間にわたって除草剤成分が残留し、雑草が根からその成分を吸収することにより枯れるというものです。このタイプは緩効型で、効果が持続している期間であれば、新たに発芽した雑草にも効果があります。しかし、草丈が20センチ以上の雑草にはあまり効果がないといわれています。

 さて、皆さんはお気づきかもしれませんね?知らず知らずのうちに木を枯らしてしまうのは、非農耕地用・非選択性・土壌処理型の除草剤です。除草剤ラベルの裏面を見ると、「木の根が伸びていないところ、木から離れたところに散布してください」と書いてあります。メーカーのウェブサイトを確認すると、「松は枯れやすいので、絶対に周辺で使用しないでください」とも書いてあります。実際に「木が弱っているので診てほしい」と私に問い合わせがある中でも、除草剤だな?と思われる不自然な枯れ方をしている木々が散見されます。家の方に除草剤の使用の有無を確認しても、使ったことを言ってくださる方、言ってくださらない方と当然います。また実際に除草剤を散布したことすら忘れている方もいらっしゃいます。

 せっかくご自分のお庭に植えた木々です。木の周りに生えた雑草は、除草剤に頼らない方法(手抜き草取り、機械除草など)で対処してください。暑いのでついつい除草剤でさっと済ませてしまいたいと思うのも人情ですが、愛情をもって、庭木のお世話をして欲しいなぁと思う、とある夏の日の午後です。

第21回 樹木医が行く!安易な除草剤の散布には注意が必要です

樹木医 喜多 智靖(きたともやす)
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
石川県金沢市出身・富士市在住

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