98%枯れている木を治療して思うこと -続報-

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樹木医が行く!

 

第18回

98%枯れている木を治療して思うこと  -続報-

 昨年4月にどう見ても外見上98%は枯れていると思われるクロマツの樹木治療を行いました。宮城県仙台市の沿岸部、東日本大震災の津波被害を受けながらも瀕死の状態で残っていた木で、その経緯は以前にもこのコラムで紹介しました。今回はその続報について書きたいと思います。

 結果から言いますと、残念ながら枯れてしまいました。正確にはまだかすかに生きていたのですが、今回実施した治療の効果がまったく見られず、生育を急加速させることができませんでした。このままの生育状態では樹齢40年(推定)、樹高20メートルほどの大きな体を支え続けることはできず、いつか倒れてしまうと判断し、伐採をする決断をしました。

 4月に治療を行い、その後、徐々に回復し(ある意味驚異的でした)、治療直前にはほぼ見ることのなかった緑の葉が目立つようにまでなっていきました。7月末に私自身が確認した時も、順調な様子で安心した記憶があります。治療を手伝っていただいた仙台の方々も定期的に様子を見てくれていて、8月までは安定した経過でした。

 ところが、次に私のところに連絡が来た9月下旬、「クロマツの様子が急変した」というのです。すぐに写真や動画を送ってもらって確認したのですが、8月まで私が確認していた緑の葉がまったくなく、茶色い葉のみでした。外見上「完全に枯れた」と判断するしかありませんでした。

 10月に伐採を行ったのですが、その直前に最後の根系調査を行なったところ、異常なまでに降った9月の雨が原因で枯れたのではないかという結論になりました。過湿によって根が弱ってしまったのです。昨年の9月は静岡でも30日間のうち25日が雨という異常さで、それは仙台でも同様でした。もともとこのクロマツは東日本大震災の時に地盤沈下を起こした場所に立っており、水はけが悪く、さらにその後の周辺での工事によって根元に水が溜まるほど過湿な条件となり、弱っていった木でした。工事も終わり、いくらかは土壌の過湿状態は改善されましたが、決して良い条件ではありませんでした。そこに降り注いだ大量の雨でした。

 この仕事をしていると、自然が相手となりますので、なかなか期待するようになってくれないことがたくさんあります。しかし今回の件は、途中までは順調だっただけに大きなショックを受けました。自分の知識・技術のレベルをもっと上げないとダメだなぁと、しみじみと思った出来事でした。

第18回 樹木医が行く!1伐採せざるをえなかったクロマツの木

樹木医 喜多 智靖(きたともやす)
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
石川県金沢市出身・富士市在住

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