「産後うつ」気づいて!つないで!(1)

赤ちゃんの足

産婆の住む街から 第8回

産後1年以内に亡くなった女性の死因第1位は自殺です

赤ちゃんが生まれ、家族や友人の祝福を受け、幸せいっぱいなはずの女性を襲う恐ろしい病「産後うつ」をご存じですか?発症のきっかけとなる原因が明らかな場合もありますが、家族の協力もあって、夫との関係も良好、赤ちゃんも特別手がかかるわけでもないという場合でも起こります。

出産後に約半数の女性が「マタニティーブルー」と呼ばれる気持ちのゆらぎを経験します。その多くは出産後1ヵ月くらいまでの間に治まりますが、産後うつは、出産した女性の約10%にみられ、1ヵ月以降も症状が続いたり、出産後しばらくは問題がなくても、数ヵ月してから症状が出現するという場合もあります。

東京都内の妊産婦の自殺(2005~2014年)について調査が行なわれました(順天堂大学・竹田省ほか)。妊産婦10万人あたり8.5人が自ら命を絶っており、その約1/3が妊娠中、2/3が産後1年未満で、同世代の一般女性の自殺者数の約2/3以上を占めているという結果でした。妊産婦死亡率(妊娠中~産後42日未満の妊娠・出産に関連した死亡の割合)が10万人あたり3.3人であることを考えると、その多さに驚きます。

産後うつになると、ほんの少しの失敗(たとえばオムツ交換中に赤ちゃんにおしっこをされて洋服が濡れて着替えが必要になったなど)をしただけでも、自分はすべてができないダメな母親だと嘆いたりします。赤ちゃんに起こるすべての心配事を自分のせいだと一人で抱え込んでしまったり、赤ちゃんは日に日に成長しているのに、今の状態(夜泣きで夜眠れないなど)がずっと続くと思い込んだり、何から何まで絶望的で終わりのない負の感情に苦しみます。

子育て中の女性が自殺をほのめかしたり、取り乱して泣いてばかりいたら、心配な状態であるとすぐにわかるのですが、無表情でぼーっとしながら赤ちゃんのお世話をしている、食欲がなく痩せてきた、妙に動作がゆっくりで要領が悪いなど、いつもとは違う様子が見られる場合にも、産後うつを疑ってみてください。たくさんのサポートを受けていながらこんな状態になってしまっているということに強い罪悪感を持ってしまい、気持ちを抑圧しているかもしれません。

母子を守るために何より大切なことは、早く適切な治療を開始することです。子育てに慣れてくればそのうち治るだろう、ちょっと疲れているだけに違いない、もう少し家族で頑張ってみようと放置して先送りにしても、こじれるばかり。母親になったのだからしっかりしろと叱咤激励するようなことはもってのほかです。

心配な状態が見られたら、まずは地域の助産師や保健師に相談してみましょう。受診の手配やアドバイスをもらうことができます。また富士市内の母子に関しては、私を含む有志の助産師が立ち上げたLINE公式アカウント『妊産婦こころほっとLINE』もおすすめです。利用は無料で、ご本人はもちろんご家族からの相談にも地域の助産師が対応します。

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堀田久美プロフィール

堀田 久美

菜桜助産所代表 助産師・保健学博士
ほった くみ/富士市宮島で助産所を営み、出産・産後ケア・育児相談から、更年期 以降の女性の健康管理まで、出産を経験する女性の一生をサポート する「ママたちのお母さん」。母親のための各種教室も随時開催中。
菜桜助産所
訪問看護ステーション菜桜

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