エコに雑草と戦ってみました!

樹木医が行く! 第15回

その日は曇りの天気予報とはうらはらに、快晴で炎天下の一日でした。通常はこのような時期にこのような天候下で植物の治療・植栽・移植などは決して行いません。一般的にすべての要素であまり良くない方向に作用してしまうからです。

しかし炎天下の7月29日、数多くの車が行き来する牧之原市内の駐車場にて、高校生と一緒に雑草に対してエコな戦いをしてきました。一緒に活動をしてきたのは全国的に研究活動発表などで頑張っている富士宮市の富岳館高校農業クラブの生徒たち3名です。

富岳館高校の生徒と炎天下での作業

富岳館高校の生徒と炎天下での作業

 

今回の雑草との戦いは、イソギク、生分解性防草シート、易錆性(いせいせい)鉄止めピンのエコなセットで挑みました。イソギクは静岡県の沿岸部にも自生する日本在来種の植物で、波打ち際や海の断崖絶壁に生えています。そんな環境で生きているため、悪環境にも負けない強い生命力を持っています。耐乾性・耐暑性・耐寒性・耐アルカリ性・耐塩性など、考えつくすべての環境で生き続けることのできる植物です。私は東北地方での東日本大震災の津波による塩害対策活動を行っている時にこの植物と出会いました。

イソギクが1年~1年半程度で地面を覆い、太陽の光を遮断することにより、またセイタカアワダチソウのように根からアレロパシー物質(いわゆる毒素)を出して他の植物が生えないように抑え込むことで、雑草を防いでくれます。それに加えて5年程度で腐ってなくなってしまうサトウキビ由来の生分解性防草シート、同じく数年で錆びてなくなってしまう鉄製の止めピンを使用することにより、数年後にはオリーブの木のようにキラキラと輝くイソギクの葉だけが一面を覆い、毎年11月頃には他の植物が枯れ始める荒涼とした風景の中で、黄色や白の美しい花を咲かせます。雑草を抑えつつ、景観も美しくしてくれる珍しい植物なのです。またイソギクの花はその年最後のミツバチの蜜源にもなるそうです。

イソギク1

防草シートや止めピンはやがて姿を消す


イソギク2

満開となったイソギクの花
(宮城県で行った塩害対策活動より)

これまで私は宮城県で津波被害を受けた地域へのイソギクの植栽を中心に考え、活動してきましたが、今回初めて静岡県で植栽しました。農業分野でいろいろと成果をあげている富岳館高校農業クラブと一緒に活動を行う中で、今後この多くの可能性を秘めた植物の使い方について、優秀な高校生から新しいアイディアがどんどん飛び出し、農業やその他の分野にも応用できるようになると面白いなあと、個人的にひそかに思っているところです。今後の展開に期待したいですね。

喜多智康プロフィール

喜多 智靖

樹木医
アイキ樹木メンテナンス株式会社 代表取締役
弱った木の診断調査・治療に加え、樹木の予防検診サービス『樹木ドック』を展開中。NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』では、東日本大震災で津波被害を受けた宮城県石巻市での除塩作業や学校における環境教育授業を継続中。
喜多さんのブログ『樹木医!目指して!』
アイキ樹木メンテナンス株式会社
NPO法人『樹木いきいきプロジェクト』 

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