コロナの片隅で④ 『ソウタカンボジアシルク』

先行きが不透明だからこそ、進み続ける

face to face ソウタカンボジアシルク
オーナー・望月颯太さん

 コロナ禍における現状を伺おうと今回訪ねたのは、8年前に日本に帰化し、富士市でカンボジアシルク専門店『ソウタカンボジアシルク』を経営する望月颯太さん(vol.140に登場)。幸い、祖国カンボジアはコロナの封じ込めに成功し、親戚もふだん通りの生活を送っているというが、富士を拠点に世界で勝負できるファッションブランドを目指す望月さんには、さまざまな変化があったという。やむを得ない状況さえ“コロナのおかげ”と受け止める望月さんの考え方と行動力は、逆境の中、少しでも前に進みたいと願う人々にとって、大きなヒントになりそうだ。

海外渡航も制限され、ステイホームが実施された間、お店にはどんな影響がありましたか?

 「もともと交通量は多くても歩行者は少ない場所なので、向かいの富士市交流プラザや図書館が閉鎖した時は人の流れが途絶え、客足は9割減に。現在も元通りとはいかず、営業時間を短縮しています。店で扱う洋服やファッション小物は、企画からデザイン、型紙製作まで僕が行い、カンボジアの工房で職人が手作りしているので、品質管理などで年に数回現地へ行くのですが、今年は1月以降行けていません。職人とのリモートでのやり取りは、対面で話すのと違い細かい点が伝わりづらく、難しさも感じますね。」

face to face ソウタカンボジアシルク

4月に制作・販売したマスクは、肌に優しいシルク製とコットン製。富士市社会福祉協議会を通じて寄付もした。

 作り手であると同時に経営者でもある望月さん。経営へのアプローチは変わりましたか?

  「まず、開店から約5年間のやり方を見直して、考え方をリセットすることにしました。今までは、これだと思う商品を大きめのロット数で製造・販売していましたが、経営的には在庫を抱えるリスクを最小限に抑えたい。最近はバリエーションのある商品を少数製造して、より早く完売させる高速回転にシフトしています。高品質なものづくりの軸は変えずに、経営を安定させるためのさまざまな方法を模索中です。先日はインスタライブ(写真共有Webサービス・インスタグラムでの動画配信)でバッグやストール、お財布をご紹介。ストールの巻き方も見せられるので、オンラインでの購入につながります。対面でお客様と会話しながら商品やブランドの魅力を知ってもらうことを大切にしてきましたが、コロナのおかげで発想の転換ができました。インスタグラムや1日3回の更新を欠かさないブログなどが集客につながり、オンラインでも安定して商品が売れるようになってきたんです。ホームページのデザインを一新したり、商品の掲載写真にこだわったり……。パソコン嫌いだった僕がこういった作業を楽しめるようになるとは(笑)、これもコロナのおかげです。また、ブランドの認知度を上げるため、月の半分を全国の百貨店への出張に充てることに。感染状況を見極めつつ、先日も山口と広島へ行ってきました。僕のブランドのターゲット層は、自分が本当によいと思えるオンリーワンに価値を見出す方々。百貨店に出店することで、そういった層のお客様へ届く機会が増えるんです。ただお店にいて、お客様が来てくれるのを待つ受け身の姿勢では、状況は変わりません。」

コロナ禍で大切にしている考え方と、今後やっていきたいことを教えてください。

 「大事なのは、とにかく止まらないこと。先が見えなくても、自分を信じて今やれることを続けることが、将来につながると思います。カンボジアの工房でも、新商品の制作がストップしている間は、生地作りなどほかの工程を進め、職人の仕事が無くならないようにしています。経営の面ではやり方を変えたことも多いですが、作り手として、世界を驚かす質のいいものを作りたいという気持ちは変わりません。世界的に有名なファッションデザイナーにだって負けないプロ意識で仕事をして、お客様をワクワクさせたい。今後5年間で、ラグジュアリーブランドとして確立させるのが目標です。それがカンボジアの織物の伝統を守り、発展させていくことにもつながりますから。じつは9月に、カンボジアシルクの発展に貢献している活動が認められ、カンボジア王室から招待を受けていましたが、コロナで訪問は見送りに。収束したら王室を訪れ、新作を献上したいと思っています。ブランドのためにも、お客様のためにも、コロナを言い訳にして現状にとどまる気はないんです。」

(ライター/小林千絵)

ソウタカンボジアシルク

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