コロナの片隅で(1) 富士市若者相談窓口ココ☆カラ 渡邉慈子さんに訊く

「困難を抱える若者の居場所はどんな時でも守り抜きたい」

ニートや引きこもり、不登校など困難や生きづらさを抱える若者を支える『富士市若者相談窓口 ココ☆カラ』。新型コロナウイルスによる自粛期間中は施設の利用制限を余儀なくされ、『若者を応援する社会人サポーター養成講座』も夏の回は中止となった。

業務に大きな制約がある中でも若者の居場所確保に奔走する相談員の渡邉慈子さんに、自粛期間に行なってきた創意工夫や今後の取り組みについて話を伺った。

渡邉慈子さん

相談員・渡邉慈子さん

富士市では4月9日に感染者が発生しました。直接的にはどんな影響がありましたか?

ココ☆カラがある富士市教育プラザは、会議室や多目的室を備えた公共施設。そのため、市内で患者が確認された時点で施設の利用は制限され、再開できたのは5月後半でした。その間も、困難を抱える若者をサポートするという業務の特性上、急を要する相談もあり、2時間の予約枠を設けて対応していました。しかし、学校や家庭に代わる安全な『居場所』として何気なく立ち寄って雑談するなど、ココ☆カラを利用していた若者たちは、行き場を失った状態に。

感染者増加の報道に不安感が増した、引きこもりから一歩踏み出しかけたのに自粛でまたこもるようになった、世間のピリピリした空気や人の視線が怖い、休校で出鼻をくじかれ学校生活に適応できない……など、しんどい思いを抱える若者が増えました。仕事を持つ若者でも週5の仕事が週1に減ったり、まったくなくなったりなど、より不安定な雇用状況に置かれています。

富士市教育プラザ

富士市教育プラザ

制約のある中、どのような工夫で若者の支援を続けていましたか?

敷地内の畑を『居場所』として、一緒に農作業をしたり、屋外で感染リスクを避けつつ、直接交流を図りました。また、屋外での相談や電話、LINE、ZOOM(ビデオ会議システム)も積極的に利用しました。若者とサポーターの座談会であるフォローアップミーティングをオンラインで行なったら、これまでは対面することができなかったのに初めて顔を出せた若者がいて、今後のリアルとオンラインの並行利用へのヒントになりました。

他にも施設が使えなかった間に、サポーターが個人的に連絡を取って散歩に連れ出してくれるなど、地域や個人レベルでの支援も続いていました。今も施設の部屋には人数制限があるので、教育プラザ内のロビーや会議室で分散して過ごすなど工夫しています。

雇用の面では、サポーターの企業や個人の方から、例えば草取りや掃除、引っ越しの手伝い、ポスティング、農業、製造など、求人票に載らないようなお手伝い仕事を創出してもらい、困っている若者の収入につなげようとしています。

今後懸念されることと、ココ☆カラのアクションについて教えてください。

新型コロナウイルスの影響は今後、より深刻になるかもしれません。相談者やその家庭は、もともと経済的に不安定なことも多く、この経済状況が続けばいずれ公的支援に頼らざるを得ないケースも増えてくると予想されます。ストレスによる虐待や、引きこもりの長期化も危惧されます。

そんな状況で、困難を抱える若者がポロっと不安をこぼせる安全な『居場所』であり『相談できる場』であるココ☆カラが果たすべき役割はますます重要になるはずです。自己責任論に呑まれ、自ら声を上げられない若者たちが本当に行き詰ってしまう前に、チラシやSNSを駆使して我々の存在を周知し、声なき声に耳を傾ける場所でありたいと思います。

(ライター/小林千絵)

若者相談窓口 ココ☆カラ
ニート・ひきこもりなどの悩みを抱えた若者の相談窓口です。 「働きたいけど自信がない」「コミュニケーションが苦手で社会に出るのが怖い」「学校に行くことができない」などの悩みについて、一緒に考えます。 一人で悩まずに、まずは相談にお越しください。

富士市八代町1番1号 富士市教育プラザ1階
TEL:0545-55-0562
火曜日~土曜日(日曜日・月曜日・祝日・年末年始は休所)
午前9時~午後5時
富士市ホームページへ

 

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