コロナ禍の今こそ…無病息災の縁起物「だるま」

日本一のだるま市のまち 富士をPR ~「鈴川だるま」プロジェクト~

コロンとしたかわいらしいフォルムに似つかわしくない髭面で、倒しても倒しても何度でも起き上がる張り子のおもちゃ、だるまさん。新型コロナウイルスの流行で昨年からさまざまなイベントが中止となるなか、「毘沙門さん」の愛称で親しまれている富士の冬の風物詩・妙法寺(富士市今井)の毘沙門天大祭・だるま市も中止が決まった。
 「こんな時だからこそ『だるまプロジェクト』。富士では昔から、魔除け・厄除けの象徴はだるまです」と富士のだるまについて熱く語るのは、富士市まちの駅ネットワークの「鈴川だるま」プロジェクトのプロジェクトリーダーで、全日本だるま研究会副会長の林直輝さん。日本一の富士山の麓の日本一のだるま市。市民にそれほど認知されていないが、観光資源としてもだるまに期待が寄せられる。

林直輝さん

疫病退散!お参りしなくても、だるまを飾ろう 

 富士のだるまは、だるま市の開かれる妙法寺の所在地にちなみ「鈴川だるま」と呼ばれる。「鈴川だるま」プロジェクトは、毘沙門天大祭を盛り上げ、だるまの町・富士を広く知ってもらうことを目的に市民参加型の企画を繰り広げ、2年目の今年度も『だるまコラージュのワークショップ』や岳南電車の協力による『だるま電車』の運行(右ページ参照)、さらに子どもから大人まで参加できる『開運!オリジナルだるまコンテスト』を開催。今年、大祭は中止だが、だるま市が行なわれないからこそ、プロジェクトの意義は高いという。
 「全国的には疫病退散に『アマビエ』が有名になりましたが、この地域には昔からだるまがあります。無病息災を願い、家にだるまを飾ってほしいですね。コロナ禍の巣ごもり生活中に、オリジナルだるまを製作するのもおすすめです。」
だるまコンテストは一昨年まで富士市吉原の松栄堂薬局で開催されていたが、第14回から同プロジェクトが引き継いだ。市内各所で参加を呼びかけ、土台となる白だるまは1月半ば時点で約200個が購入されたという。オリジナルだるまコンテストの結果発表は2月10日(水)、応募作品は2月末まで富士市吉原の富士市民活動センター・コミュニティfで展示されている。

コンテスト(昨年)の受賞作品

穏やかな表情は地域性の表れ 鈴川だるまは「とぼけ顔」

 だるまは禅宗の始祖・達磨大師がモデルで、何度倒しても起き上がることから、縁起物として人気が高い。
 「一般的に厳つい表情を思い浮かべるかもしれませんが、それは主として高崎市のだるまのイメージ。富士のだるまは穏やかなとぼけ顔です。」
 毘沙門天大祭のだるま市は明治中期、静岡市のだるま店「澤屋」が子ども向けの玩具として露店で販売したところ土産物として人気を集め、あっという間に完売したことが始まりで、その後、澤屋で修業した吉原の「杉山ダルマ店」と「小楠ダルマ店」が地元で生産するようになり、だるま市の発展に大きく貢献した。きりっと厳しい顔のだるまは子どもが怖がることもあって、穏やかな顔が好まれるようになったという。
 「静岡市のだるまがルーツですが、富士の人が『いい商材だ』と目をつけて地元の好みを反映したんですよ。」
 手で描かれた顔のほか、植毛が施された厳しい顔のだるまも並ぶ。こちらは妙法寺で祀っている「毘沙門天に似ている」という理由で人気だそうだ。一つの地域に根付く2種類のだるま。これもほかの地域にはない特徴だという。

かつて圧倒的な日本一だった富士のだるま市

 「日本三大だるま市」といえば、毘沙門天大祭のほか、群馬県高崎市のだるま市、東京都調布市の深大寺のだるま市があげられる。地元のだるまが並ぶのが一般的だが、富士には全国各地のだるまが集まるため、だるま選びの選択肢が広がる。ひいきのだるま屋さんで気に入ったものを選び、店主との値段交渉を楽しむのもだるま市の醍醐味だ。お寺のお祭りと同時に開催されるが、宗教的行事でも、お寺の押し付けでもない。土産の一つだっただるまが注目され、だるま市にまで発展し、露店や来場者の数、全国から集まるだるまの種類から、日本一と称されるまでになった。一昔前まで沿道に人があふれ、親の手を離さないよう必死な子どもの姿も見られるほどだったが、近年、来場者数は減少しているようだ。さらに他市の行政がだるまを観光の目玉に据え、だるまを前面に出したことから、富士のだるま市は日本一の座から陥落しかかっているという。
 「昔から当たり前のように行なわれてきた伝統行事ですが、まずは地元の人が世界に誇れるものだと知ることが大事。富士山のように地元に当たり前のようにある日本一ですが、伝統は維持するのが大変です。」
 コロナ禍で地元で過ごすことが多くなっている今、世界に誇れる富士のだるまに目を向けてみてはいかがだろうか。

(ライター/川島和美)