モノものがたり(5)/シードルフィン 古郡信幸さんの窯

元料理人の菓子職人が焼く格別な生地

『シードルフィン』は、吉原商店街にあるロールケーキとシュークリームのお店。その他にプリン、焼き菓子も販売している店内には、いたるところにイルカのモチーフが飾られている。

店主の古郡信幸さんに店名の由来を尋ねた。

店主・古郡信幸さん

「イルカは幸せを運ぶといわれています。シー(C)は、幸せのクローバーやチャレンジ、チェンジといった意味。これから新しいことに挑戦する人にお菓子で幸せを運べたらという思いを込めました。」

古郡さんは、以前はフレンチの世界にいた。お菓子を作るときもベースには料理の技術があるという。

「カスタードを作るときは、一般的には中火にして混ぜながら火を入れますが、私の場合はオムレツを作るときのように一気に火を入れます。強火にしておいて、間接的に火が入るように空気を入れながらガンガン混ぜながら作ります。料理とお菓子作りのアプローチのちょっとした違いですね。」

35歳のとき思い立ち、フレンチの店を離れてお菓子づくりの道に入った。修業先の菓子店ではケーキの生地担当となる。お菓子業界は料理業界よりも若い人が多い。仕事を教えてくれたのも、ひと回り以上年下の19歳の上司だった。

しかし現場仕事の中だけでは、工程は学ぶことができてもその裏にある「なぜ?」まではなかなか見えてこない。たとえば「なぜ生地に水をかけるのか」「それをやらないとどうなるのか」。やり方を少しずつ変えながら、失敗したり、品質が安定しなかったり、その理由を探るための試行錯誤が始まった。

「図書館に行って小麦粉について調べて、同僚に気づかれない程度にオーブンを微調整しながら3年ほど焼き方を研究し、生地の水分量や温度、オーブンの火力などの調整で生地の焼き上がりが変わる感覚がわかってきました。そうしていくうちに、お客さんから生地が美味しくなったと言ってもらえるようになったんです。」

その後、それらをきめ細かく調整することのできる『南蛮窯』というブランドのオーブンのことを知った。

「南蛮窯なら、試行錯誤の末に見つけた自分なりの個性を実現できると思いました。この窯があったから店を始めたといっても過言ではありません。」

こだわりの焼き窯 “南蛮窯バッケン”

密閉性の高い南蛮窯で生地に圧をかけることによりデンプン質が出てモチモチになるという。シードルフィンのふわふわのロールケーキの秘訣はここにある。

フレンチの道から離れ、あえて若い人たちの中に入って菓子の世界へ挑戦した古郡さんだが、その印象はとても柔和だ。そして、作るケーキも柔らかで、甘くて優しい。

午後3時を過ぎる頃、近所のお母さんやOLさんが次々とやってきた。おやつの時間を楽しみにしている人たちにシードルフィンは幸せを届ける。

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 (ライター/針ヶ谷あす香)


シードルフィン
富士市吉原 2- 2- 10
TEL:0545-53-5575
cdolphin.jimdofree.com