モノものがたり③ 佳肴季凛 志村弘信さんとブログ

日々、発信し続ける

 『佳肴 季凛』は、ふぐ、はもを看板とし、マクロビオティックの考え方を取り入れた日本料理店。店主の志村弘信さんは、ふぐの美味しさ、見た目の可愛らしさに魅了され「ふぐに萌え、燃え♡」のキャッチフレーズでふぐの魅力を伝えている。ブログ等の写真でふぐと一緒に写っている志村さんのにっこり笑顔からふぐ好きが伝わってくる。

 「自分が修行していた料理屋で養殖のふぐを提供していましたが、天然のふぐに興味があったので自分で買って食べたら美味しくて、天然と養殖はこんなに違うのだと驚きました。天然のふぐを提供するためにこの店を作ったというところがあります。」 

 志村さんは、佳肴季凛のブログをこれまで3,000記事以上書き、フェイスブック、インスタグラム、ツイッターといったSNSもほぼ毎日更新している。
 開業前の14年ほど昔にパソコンに詳しい同級生から聞いた「これからはインターネットの検索で物を探す時代になる」という話に影響を受け、手始めに簡単なホームページを作ってブログを始めた。3ヵ月ほど続けたとき、自分の書いたふぐの記事を見たお客さんがお店に食べに来てくれた。それをきっかけにブログが集客の肝になり、SNSでの発信も始めた。

ある日のブログでは、朝の魚市場での仕入れから始まり、店に戻ってからの仕込み、営業中のことや片付けまで一日のできごとを細かに撮影した写真と文章が並ぶ。また、子どもたちに作ったお昼ご飯のことやお店にある薪ストーブのことなど、多岐にわたる内容から人柄が伝わってくる。
 これほど淡々と日々続けられるのは、書くことや発信することが好きだからなのだろうか。思わず質問してみるとこんな答えが返ってきた。

 「ブログは、楽しい、楽しくないかは別にして、やらないとお客さんが来ないという強迫観念があります。発信をして、読んでもらえればお客さんにとって身近な存在になると思うんです。どんな人がどんな思い入れがあって食べてもらいたいのか、それを伝えて、相手の気持ちに近寄っていかないと、良い料理を作るだけではいけないと思うんです。」

ブログの発信を始めてから、店の経営にはさまざまな局面があった。外国人客にお店に来てもらいたいと考えたとき。コロナウイルスにより営業が自粛となったとき。そして世の中の“新しい生活様式”への変化……。どんな状況のなかでも伝え、発信をする。それは、自分のこだわりをこれみよがしにアピールするのでも、店の営業を過度に脚色するのでもなく、日本料理店の店主がありのままに綴る日記だ。読めば、お店に足を運んだことがない人も、常連さん以上に志村さんの日常を知る。

インタビュー中に志村さんから「そんなとき、じゃあどうしたらいいかなって考えたんです」という言葉が何度も出た。志村さんを支えた原動力は、どんなときでも伝えたいことがあって、料理を食べてもらいたいという思い。そのために志村さんは、今日も目の前のお客さんに逸品を作り、まだ見ぬお客さんのために発信し続ける。


 (ライター/針ヶ谷あす香)

face to face 佳肴季凛

佳肴季凛(かこうきりん)
www.kakoh-kirin.jp
富士市厚原765-1 TEL:0545-72-4911


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