富士高砂酒造 『天之美禄 山屋』

地酒復活! 富士市でしか買えない逸品』

 かつて富士にもあった地酒。江戸時代には浮世絵や『東海道中膝栗毛』に登場するほど有名だったが、明治以降、工業が盛んになるにつれ富士の酒造業は衰退していき、昭和後期に1軒だけ残っていた富士市本市場の酒造所『山屋』が火事で焼失し、幕を閉じた。

『天之美禄 山屋』を手にする竹川昌利さん

 半世紀前に途絶えた富士の地酒が今年3月、その山屋のルーツである富士宮の富士高砂酒造株式会社によって復活した。かつて親しまれた山屋の銘酒『田子の浦』の味を当時の蔵人と協力しながら再現し、新たに『天之美禄 山屋』と銘打って発売したこの清酒は、ほどよいキレが特徴。飲み飽きず、日本酒を飲み慣れていなくてもスルスルっと飲める仕上がりだ。

「地元の食材には地元のお酒が合うんです。田子の浦産のしらすを肴にすると絶品です」というのは、富士高砂酒造営業部主任の竹川昌利さん。富士と富士宮で微妙に異なる水質や気候の違いをうまく調整しながら、原点である『田子の浦』を知る人も満足のいく見事な出来上がりになった。
 富士高砂酒造は今年で創業190年。1830(天保元)年頃に創業者の山中正吉氏が富士宮にて『中屋』の屋号で酒や醤油、味噌などの製造を行なったのが始まりとされる。明治時代には今の富士市岩本に支店を出し、その後本市場に移転したが、この支店が『山屋』と名乗り、以降70年以上にわたって富士で酒造りを続けた。

店内には清酒『田子の浦』の看板が今も残る

『天之美禄 山屋』の販売は富士市内の酒販売店や飲食店などに限られ、富士宮の高砂酒造本店ですら「富士市ではないので」と店頭に並べない徹底ぶりだ。竹川さんは「地域で育ててもらえるような酒になってほしい」と、復活した地酒の地元・富士市での浸透を願い、市内の取扱店を募集している。現在は一升瓶のみでの販売(税込1,977円)だが、この9月には純米吟醸酒の販売を600本限定で開始するなど、山屋のブランド展開も進めていく予定だ。


 (ライター/川島和美)

富士高砂酒造株式会社
富士宮市宝町9-25 TEL:0544-27-2008 www.fuji-takasago.com