作家大村あつしさんの最新刊「しおんは、ボクにおせっかい」

第1回

 読後、物語の余韻に浸りながら、「ちょっとやって みようかな」と、生活に取り入れてみたい要素がちり ばめられている、実用書のような小説だ。本紙 2019 年 1 月号に登場した、富士市出身・在住の作家・大村 あつしさんの最新刊『しおんは、ボクにおせっかい』 (KADOKAWA)は富士市が舞台のラブストーリーで、 誰もが自分の思い描いた人生を実現させ、幸せにな る方法を伝える。「自己啓発恋愛小説」という、新鮮 でちょっと不思議なキャッチコピーを掲げる同作品 について、大村さんに話を聞いた。

前作の『マルチナ、 永遠のAI。』は恋愛小説ベースの AI 解説書のようでしたが、今作は自己啓発の小説な のですね。 

「実は『マルチナ』よりも前にでき上がっていた物 語で、スマホやタブレットという新しい媒体で本が どのように読まれていくのかを試してみたいと思い、 インターネット上のとある小説投稿サイトで発表し たんです。読者の反応がとても良く、今回の書籍化 となりました。私自身、小説家として軌道に乗るま で苦労したので、自己啓発本には20 代の頃からたく さん触れてきました。そんな原体験が今回のストー リーにつながっています。主人公の雄大とその幼馴染・ しおんの軽妙な会話を楽しみ、しおんにおせっかい を焼かれながら思いを実現していく雄大に感情移入 するうちに、本当の成功法則に読者も気づくように なっています。」

舞台が富士市なので、地元の人には雄大としおんの いる風景が容易に想像できるのも面白味のひとつに なりますね。

 「駅や商店街、港など、地元住民には馴染み深い場 所がたくさん出てきます。登場するお店も名称は変 えてありますが実在のものがモデルになっているの で、推測しながら読み進めるのも楽しみ方の一つで すね。しおんのキャラクターづくりでイメージを重 ねた、元・モーニング娘。の道重さゆみさんが表紙を 飾っていて話題性もあり、最近ではいろんな作品の ファンがその舞台の街を訪れるという楽しみ方も一 般的なので、富士・富士宮地域にも小説を読んだ人た ちが来てくれるといいなと思っています。」

しおんが雄大に伝える「幸せになるための法則」は 誰でも活用できそうですね。

 「願っているだけ、待っているだけでは幸運は降っ てきません。いわゆる『引き寄せの法則』を否定する ところから出発し、実現したいことがあるとき、思い 通りに物事が進まないときにどうしたら前に進める のかを、物語というかたちで描きました。幸せとい うのは本人の気持ち次第です。どんな状況にあって も、悪いことと良いことの両面があります。行き詰 まって動けないときには悪いことの方にしか目がい かないだけで、良いことが一つも見つからない状況 というのは滅多にないはずです。勉強、仕事、子育てなど、人それぞれ悩みは違いますが、実現したいこ とがあるときに読んで試してほしいです。子育て中 の人には子どもへの接し方のヒントにもなるかもし れません。そして読み終わった後、表紙と裏表紙の 写真に込められた意味まで汲みとっていただけたら 嬉しいです。」

 ちょっと厚めの本だが、「LINE 感覚で読める」と いう表紙の帯どおり、二人の恋の行方が気になり、 どんどん読み進められるのも魅力だ。新型コロナウ イルスの影響もあり、すっきりしないままスタート した新年度。読書で心機一転、生活に弾みを与えて くれる一冊になるだろう。


大村 あつし

おおむら・あつし

作家・I Tライター

1966(昭和41)年3月13日生まれ(52歳)
富士市出身・在住

富士市出身で富士高卒業生。PC 解説書で多くのベストセラーを出す 一方、2007年には『エブリ リトル シング』で小説家としてもデビュー。 翻訳出版や舞台化もされヒット作に。2018年『マルチナ、永遠のAI。』 では人工知能のトレンド解説と冒険サスペンスを見事に融合させる。

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大村あつしさんの最新刊

face to face vol.161

しおんは、ボクにおせっかい

定価:1,300 円+税
KADOKAWA 発行 ISBN 978-4-04-604639-0
全国の書店で発売中。イオンタウン富士南 2Fの未来屋書店では期間限定で特設コーナーも設置。

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