スイスからようこそ

第26回

 2月中旬、新型コロナウイルスの問題で海外からの観光客が減少しているといわれる中、はたして取材に応じてくれる外国人に出会えるだろうかと心配しながら訪れてみた富士山本宮浅間大社だったが、なんと今回は現地到着からわずか3分、最初に声をかけたカップルにインタビューすることができた。

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スイス・バーゼル在住のミハエルさん・智美さんご夫妻

「女性はアジア系の方かな?」とは思いつつ、とりあえず英語で話しかけたのだが、インタビュアーの貧相な英語が聞くに堪えなかったのか、30秒ほど経ったところで「あ、私日本人です」と助け舟を出してくれた。この時の安堵と嬉しさたるや、例えるならば海外の旅先でテレビをつけたらたまたま国際衛星放送でNHKの『おはよう日本』が流れていて、久しぶりの日本語に触れた時と同等の感動値である。

当コーナー初となる日本人の方への取材となったが、話を伺ってみると、とても素敵なストーリーが浮かび上がってきた。お二人は結婚2年目の夫婦で、スイス出身のミハエル・シャードさん(42歳)と妻の金子智美さん(30歳)。スイス北西部の都市・バーゼル在住で、今回は富士市出身の智美さんの帰省を兼ねて、日本に3週間滞在しているという。3年半前にミハエルさんが日本を旅行中に知り合ったというので、てっきりこの富士山周辺かと思いきや、意外にも「広島県の尾道で」とのこと。現在は銀行で法律関係の業務を担当しているミハエルさんは根っからの旅行好きで、1年半にも及ぶ世界一周旅行の途中で訪れた日本で尾道に滞在していたところ、友人を訪ねて旅行中だった智美さんと夕食の席で偶然出会ったそうだ。なるほど、婚活中の方は今すぐにでも尾道に行った方がいい。もちろん出会いは自己責任で。

 智美さんと知り合う前から親日家だったというミハエルさんは、なんと7回目の来日。今回の滞在では智美さんの親戚や友人に会う目的もあり、名古屋、大阪、北海道などを訪れる予定とのこと。浅間大社は初めてなのだろうかと疑問に思い尋ねたところ、「私たち、ここで挙式したんです」と、驚きの事実が。日本とスイスで2回結婚式を挙げたそうで、後日送ってもらった写真には、まさに両国を象徴する最高のロケーションで微笑むお二人の晴れ姿があった。

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スイス・バーゼル在住のミハエルさん・智美さんご夫妻
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エッギスホルン・アレッチ氷河

 国際結婚のお二人に、生活の中で感じた文化の違いについて聞いてみた。ミハエルさんが挙げたのは、温かい便座でお尻を洗ってくれる日本製のトイレ。今でこそ快適に感じるが、初めて座った時は「この温かさ、きっと僕の前に誰かが長時間座っていたに違いない」と思ったらしい。一方、それまで何の縁もなかったスイスで暮らすようになり、現在もドイツ語を猛勉強中という智美さんが最もカルチャーショックを受けたというのが、多くの日本人が戸惑う「定番ネタ」ともいえる、ハグとキス。国際情勢には感度が高い反面、人見知りで内向的な国民性ともいわれるスイスの人々は、そのぶん一度親しくなるとものすごく距離が近くなるそうで、「隣国のフランスやドイツは2回なのに、なぜかスイスの人は3回もするんですよね」と智美さんは苦笑い。その理由をミハエルさんに聞くと、「だって2回よりも3回の方が仲良しだから」と、正論のような、そうでもないような、絶妙な答えが返ってきた。ただ、間違いないのはお互いの一番の魅力は「優しいところ」と口を揃えて答えてくれたお二人の仲睦まじさに、ハグの回数は関係なさそうだということだ。

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今回の日本滞在では北海道・ニセコのスキー場でパウダースノーを満喫
画像は(ご本人より提供)

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